[第3回]中国との比較を通してシニア世代におけるキャッシュレス社会について考える〜日本の電子決済事情〜

おすすめ情報

前回は中国の事例を挙げて、いかに海外ではキャッシュレスが進行しているのかをお伝えしました。今回は日本に戻ってこの問題を考えて見ましょう。
これまでの記事をご覧になっていない方はまずそちらから!


関連する記事を読む
1.[第1回]中国との比較を通してシニア世代におけるキャッシュレス社会について考えよう〜電子決済について〜
2.[第2回]中国との比較を通してシニア世代におけるキャッシュレス社会について考えよう〜中国のモバイル決済事情〜







電子決済とモバイル決済の違い

前回の中国での記事では何度も”モバイル決済“という言葉が出ていたと思います。ここで電子決済とモバイル決済の違いについて抑えておきましょう。
簡潔にいうと、電子決済の中にモバイル決済は含まれます
モバイル決済とは、電子決済のうちスマートフォンを使って決済を行うことをさします。
現在、中国を中心に世界中で普及しているのがバーコード読み取り式またはQRコード読み取り式のモバイル決済です。モバイル決済であれば、カードなども必要なくスマートフォン一台で済ますことができます。

日本, モバイル決済, 種類

上の図を見てください。経済産業省の資料から抜粋したものですが、これらは全てモバイル決済に当たります。上の図にあるLINE pay, Apple pay以外にもPayPayなど新しい決済手段も登場し、競争が高まっています。

日本の電子決済事情

さて、日本では電子決済はどの程度広まっているのでしょうか?

経済産業省によると、2015年時点ではたったの20%未満…。
ここ数年で急速に拡大していることを鑑みても2018年時点で40%に届かない程度でしょう。

ではなぜこんなにキャッシュレスが進まないのでしょうか?
経済産業省は以下のような理由をあげています。

経済産業省が示すキャッシュレスが進まない原因
1 盗難の少なさや、現金を落としても返ってくると言われる「治安の良さ」
2 きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」
3 店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取扱いの煩雑さが少ない
4 ATM の利便性が高く「現金の入手が容易」

とても逆説的な現象ですよね。豊かでありすぎるために、かえって社会が進歩しない…さてこのままで本当に良いのでしょうか?このことについては第5回でお伝えします!

シニア世代普及の現状




シニア世代の正確な利用状況を示すデータは見つかりませんでしたが、分析の結果非常に面白い結果が出ました。

シニア, キャッシュレス, 割合
経済産業省 「キャッシュレス・ビジョン」より作成

この図を見れば分かる通り、実はシニア世代の方々の方がキャッシュレスに対して肯定的なんですよ!
これは非常に興味深い結果ですよね。
世間ではキャッシュレスが進まない原因はシニア世代にあるなどと批判する方も多いのですが、このデータはその批判が誤っていることを示唆しています。
キャッシュレスが進まない問題は実は若者にあるのかもしれませんね。

普及が進まない原因

経済産業省の統計によりますと、多くの人々が電子決済に反対する原因として以下のようなものをあげています。

浪費しそうだから
お金の感覚が麻痺しそうだから
お金のありがたみがなくなるから

さらにシニア層の不安面として以下のようなものも挙げられています。

使いこなせないのではないか
時代に取り残されてしまうのではないか

やはり、シニア層には「技術面」的な心配が大きいようです。
日本という国は非常に安全で豊かな国ですよね。ATMが故障だらけであるとか、機械がすぐ壊れてしまうなんてことはなかなか起こりません。その上、国民性として非常に倹約家が多い国でもあります。国は豊かで安全、さらに倹約。このような国民性がキャッシュレスの促進を妨げているのかもしれません。「電子決済」を使う必要性を感じないのだと考えられます。
しかし、果たしてこの状態が続いても良いのでしょうか?現在の日本社会の現状を考えると必ずしもYESとは言えないはずです。そんなことは第5回でじっくり考えましょう。

(東京大学経済学部 大木 涼太郎)

スマシルの新着記事をお届け!